東京都心の新築マンションの平均価格が1億円を超えるなど、不動産価格の上昇が止まりません。一人では買うことができない物件を「ペアローン」で借りる夫婦が増えています。
■「億ション」もペアローン利用で…
東京・目黒区、東急東横線都立大学駅から徒歩10分にある、5階建ての新築マンション。この部屋は4階3LDKの間取りで、広さは76平米。開放的なリビングやゆとりのあるキッチンが魅力です。
野村不動産 住宅営業一部
青田亮さん
「L字のキッチンなので、広々とお使いいただける。従来の縦型に比べると、作業スペースや調理スペースが多くとれている」
共有部分には、小さな子どもが遊ぶスペースや住人同士が集まれるラウンジもあります。
青田さん
「(Q.売り出している価格帯は?)こちらのお部屋ですと、4階で1億3900万円台から販売予定です」
若い夫婦や子育て世帯に人気の70平米台の物件価格は、1億1000万円台から1億4000万円台。部屋の多くがいわゆる「億ション」ですが、135部屋中129部屋が契約済み(※7月11日時点)となっています。その理由が…。
青田さん
「購入者は共働きの方が多く、ペアローンを利用してご購入する方が多い。3分の2程度がペアローンをご利用されています」
ペアローンとは、一つの物件に対して、夫婦がそれぞれ同じ金融機関で住宅ローンを組む方法。互いに相手の連帯保証人になります。若い世代を中心に、利用を検討する人が増えているといいます。
背景にあるのが、マンション価格の高騰です。
去年、東京23区で販売された新築マンションの平均価格は1億1483万円で、初めて1億円を超えました。
住宅ローンは、収入に応じて借りられる金額に限度があります。共働きの場合、どちらか一人が単独でローンを契約するよりもペアローンの方が、借入金額を増やすことができるのです。
■ペアローンの「メリット」と「リスク」
実際に、ペアローンを組んだ夫婦に話を聞きました。
30代の二人は、およそ3年前、横浜市に8000万円のマンションを購入。最寄り駅からは徒歩1分、都心からのアクセスも良いことが、決め手だったといいます。
当初の予算からはオーバーしてしまいましたが、頭金ゼロで4000万円ずつ、合わせて8000万円のペアローンを組みました。
変動金利0.38%で、返済期間は30年です。夫婦の手取りは夫が65万円、妻は19万円ほど。それぞれが自分の口座から、月々およそ12万5000円ずつ支払っています。
ペアローンを契約(30代)
「自分だけで借りられる物件の価格は、大体決まると思うんですけど、ペアローンだったらもう少し上の物件が買える。今の自分のキャパを超える物かもしれないけど。高い物だから、あまり価値が落ちにくい物を買える」
ペアローンのメリットは、借入額を大きくできることの他にも…。
ペアローンを契約(30代)
「住宅ローン減税の限度が4000万円で、その減税をフルで受けられるので、6000万円と2000万円よりも、お互い4000万円にしてフルで受けようと」
夫婦それぞれがローンを組むため、住宅ローン減税も二人分。こちらの夫婦の場合、10年間にわたって、残っているローンの1%の控除を二人分受けることができます。その総額は2人合わせて、600万円以上にもなります。
一方で、リスクもあります。
ペアローンを契約(30代)
「今後どうなるか分からないので、例えば2人が離婚した場合どうなるのか。どちらかが亡くなった場合、4000万円は残るので」
離婚する場合もローンは残り、互いが連帯保証人であることに変わりありません。さらに共同名義であることから、片方が売却を望んでも、双方の同意がなければ売却はできません。
SNSでは、次のような投稿もあります。
SNSから
「私は、まだ離婚は躊躇(ちゅうちょ)しちゃう。マンションがペアローンだからちょっと面倒…」
「ペアローンって、夫婦の絆をこんなにも強くさせるんだね。絶対離婚できない」
万が一、夫婦のどちらかが死亡してしまった場合は「団体信用生命保険」によって、亡くなった人のローン返済は免除されます。
しかし一方で、残された方のローンは継続されます。
例えば、一人で子育てをすることになり、働き方を変え、収入が下がってしまった場合でも、返済を続けなければいけません。
そうした不安に、新たなサービスが登場しています。
PayPay銀行は先月から、どちらかが死亡した場合や、病気などで働けなくなってしまった場合、住宅ローン残高が二人ともゼロになるプランを開始。
りそな銀行も、夫婦のいずれかが死亡した場合や、がんになった場合、2人の残高が完済されるプランが登場しました。
ほとんどの場合、ローンの金利が上乗せされます。
■専門家「しっかりと決めてから住宅購入した方が失敗少ない」
各銀行が「ペアローン」の開拓に力を入れる背景について、専門家はこう話します。
ファイナンシャルプランナー 飯村久美さん
「近年非常に、住宅の価格が高騰しています。ペアローンを組むと2人の収入で借りられますから、高い住宅も買うことが可能になる。そういった時代のニーズをくみ取って、顧客を獲得しようと動いている。やはりローンを組むというのは、返し続けることが重要になってくる。しっかりと決めてから、住宅を購入した方が失敗が少ないと思います」
(「グッド!モーニング」2024年7月12日放送分より)
[テレ朝news]