マイナス金利解除の影響は? 生活や住宅ローンなど 景気の動向を注視していく必要<岩手県> (24/03/26 21:00)

マイナス金利の解除で、私たちの生活や住宅ローンなどにどんな影響が出るのか、高橋礼子アナウンサーが解説します。

日本銀行は3月、これまで8年間続いた金融政策「マイナス金利」の解除を決定しました。

Q:マイナス金利とはどういった政策なのでしょうか?
普通、私たちが銀行にお金を預けると利息をもらえます。
ただマイナス金利では、民間の銀行が日本銀行にお金を預けると逆に金利を取られるという異例の政策です。

銀行が日本銀行にお金を預けず、企業や個人へ貸すことでお金が出回り、経済を活性化させようという狙いがあります。
物価が下がり、給料も下がったデフレの状況にあった2016年に導入されました。

Q:なぜこのタイミングで解除されたのでしょうか?
その理由について日本銀行は「賃金の上昇を伴う形で、物価の2%上昇を見通せる状況になった」としています。

物価の上昇は色々な場面で感じるかと思いますが、賃金も上昇の傾向があり、2024年の春闘では全国で高い水準の賃上げが相次ぎました。

日本銀行は、賃上げの流れは今後も続き賃金の上昇が物価の上昇を上回る状況が生まれてくると見て、マイナス金利の解除を判断しました。

これを受けた街の人の反応と、県内経済への影響について専門家に話を聞きました。
この歴史的な政策転換を、街の人はどう受け止めているのでしょうか。

年金受給者(70代)
「少し上がったくらいで関係ないかな。(預金の)金額が多い人は良いだろうけれど」

会社員(50歳)
「給料が上がるとか、(期待するのは)そういうことくらい」

主婦(47歳)
「うちには直接影響はないが、新聞とかを見ていると色々大変だと思う」

公務員(48歳)
「住宅ローンを組んでいるが、マイナス金利によって影響があるのかな」

公務員(40歳)
「特にまだ(影響を)感じていない。今から何かあるのかなと思っている」

今後の生活について心配する声も聞かれましたが、現段階で大きな変化は感じていないようです。

一方、専門家にも聞きました。

いわぎんリサーチ&コンサルティング 沢田茂さん
「今のところは金利の面で大きな影響はないと思う。むしろ円高方向に為替が振れるのか、影響がある」

生活への影響について、いわぎんリサーチ&コンサルティングの沢田茂さんは「円高になるか」が重要だと話します。

いわぎんリサーチ&コンサルティング 沢田茂さん
「国内での金利が上がるということは、アメリカとの金利差が縮まるということ。為替の方向としては円高方向にドライブがかかる(加速する)ことになる。円高になると輸入価格が下がるので、お店で買う値段が下がり個人消費にはプラス。企業にとっては原材料の輸入コストが下がり収益のプラス要因となる。一方、輸出の面では不利になるので、輸出の採算悪化が企業にとって負担増加に」

家計や企業への影響についてもう少し詳しく見ていきます。

まず円高による影響です。
家計にとっては「輸入品が安く購入できる」こと、企業にとっては「原材料の輸入コストが減る」ことがプラスに働きます。

一方で、企業にとっては「輸出価格が下がるため負担が増える」ことになります。

続いて金利が上がること自体で考えられる影響です。
家計では「預金の金利が上がる」ことはプラスに、一方「ローンの金利の上昇」はマイナス面として考えられます。

企業でも「借入金利が上がると設備投資の費用が上がり負担が増える」ことになります。

では私たちの生活に直接関わる住宅ローンについて、注意点を専門家・ファイナンシャルプランナーの清野謙さんに聞きました。

住宅ローンには短期間で金利が見直される「変動型」と、契約時の金利が変わらない「固定型」がありますが、変動型でローンを組んでいる場合は注意が必要だとしています。

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 清野謙さん
「世の中の金利が上がっている場合、今払っているローンを100としたら最高で125まで金額が上がる。住宅ローンの期間は決まっているので、後で多く返済をしなければいけなくなる可能性がある」

その上で、住宅ローンの基準になる金利「短期プライムレート」が変わっていないため、現時点で大きな変動はないようです。

一方これから住宅ローンを組む場合、収入や雇用形態などを踏まえ慎重に考えるべきだと話しています。

1級ファイナンシャル・プランニング技能士 清野謙さん
「変動金利で考えて、色々メリット・デメリットがあるので、そこから固定にするのか、一定期間固定にするのか考えた方が良い。自分が許容できる幅を考えて幅に収まるものを選ぶのが良いと思う」

今すぐ大きく変わるわけではありませんが、心構えとして金利がマイナスからプラスになるため収支のシミュレーションなどは変えていかなければなりません。

県内の企業への賃上げの波及や為替の円高など、まずは景気がどちらに転じていくのか、その動向を注視していく必要がありそうです。

(聞き手:住本結花アナウンサー)

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